退職代行を利用して退職しても、失業保険(雇用保険の基本手当)は受給できます。退職代行を使ったかどうかではなく、雇用保険の加入期間、働く意思と能力、退職理由などによって受給できるかが決まります。
ただし、退職代行を利用した退職は、通常の自己都合退職として扱われることがあります。その場合、受給資格を満たしていても、7日間の待期期間に加えて給付制限が設けられる可能性があります。
退職代行を使った場合の失業保険の受給条件
失業保険を受給するには、主に次の条件を満たす必要があります。
- 退職前に雇用保険へ加入していたこと
- 一定期間以上、雇用保険の被保険者期間があること
- 就職する意思があり、すぐに働ける状態であること
- ハローワークで求職の申込みを行い、求職活動をすること
退職代行の利用自体は、これらの条件に影響しません。
雇用保険の加入期間
一般的な自己都合退職では、原則として離職日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上必要です。
会社の倒産・解雇などによる離職や、やむを得ない理由による退職として認められる場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格を満たすことがあります。
被保険者期間は、単に雇用保険へ加入していた月数だけでなく、原則として1か月のうち賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、または労働時間が80時間以上ある月を基準に数えます。正確な期間は、離職票を持ってハローワークで確認してください。
働ける状態であること
失業保険は、退職した人全員に支給されるものではありません。就職する意思があり、いつでも働ける状態で、実際に仕事を探していることが必要です。
病気やけが、妊娠・出産、育児、介護などですぐに働けない場合は、通常の失業保険をすぐに受給できないことがあります。ただし、一定の条件を満たせば受給期間の延長を申請できる場合があります。
退職代行を使うと自己都合退職になるのか
退職代行を利用したことだけで、自己都合退職になるわけではありません。実際の退職理由や会社との離職に至った事情によって、離職理由が判断されます。
たとえば、本人が自分の判断で退職を申し出た場合は、一般的に自己都合退職として扱われます。一方で、会社から退職を強く迫られた、長時間労働や賃金未払いがあった、職場でハラスメントを受けていたなどの事情があれば、通常の自己都合退職とは異なる扱いになる可能性があります。
最終的な離職理由は、会社が一方的に決めるものではありません。会社が作成した離職票の内容に異議がある場合は、事情を説明できる資料を持ってハローワークへ相談できます。
自己都合退職の場合の待期期間と給付制限
自己都合退職として扱われる場合、受給資格の決定後に7日間の待期期間があります。待期期間は、失業状態を確認するための期間です。
さらに、正当な理由のない自己都合退職では、原則として待期期間の後に給付制限があります。2025年4月1日以降の退職については、通常の自己都合退職の給付制限は原則1か月です。ただし、過去の離職状況や職業訓練の受講などによって扱いが変わることがあります。
正当な理由がある退職として認められた場合は、通常の自己都合退職とは異なり、給付制限がかからないことがあります。ただし、退職者がそう主張すれば必ず認められるわけではなく、ハローワークが事情と資料を確認して判断します。
給付制限がなくなる可能性がある退職理由
次のような事情がある場合は、特定理由離職者などに該当する可能性があります。
- 賃金の未払い、著しい遅配があった
- 長時間労働が続き、健康に影響が出た
- 職場でハラスメントを受け、働き続けることが難しくなった
- 会社から退職を強く勧められた
- 契約期間満了後に更新を希望したが、更新されなかった
- 病気やけが、家族の介護など、やむを得ない事情があった
- 通勤が困難になる転勤や事業所移転があった
ただし、具体的な事情や証拠によって判断されるため、これらに当てはまりそうだからといって、必ず特別な離職理由になるとは限りません。
退職理由を説明するために用意したい資料
会社とのやり取りや勤務状況が分かる資料があると、ハローワークで事情を説明しやすくなります。
- 退職代行業者とのやり取り
- 会社から届いた退職勧奨や退職要求のメール・書面
- 給与明細、賃金の振込記録
- タイムカード、勤怠記録、残業時間の記録
- ハラスメントに関するメール、録音、メモ
- 医師の診断書や通院記録
- 会社との退職交渉に関する記録
資料がない場合でも相談はできますが、退職理由を裏付ける資料があるかどうかで確認の進み方が変わることがあります。
退職代行を利用した後に失業保険を申請する手順
退職代行業者に依頼した場合でも、失業保険の申請は原則として本人がハローワークで行います。基本的な流れは次のとおりです。
- 会社から離職票などの退職関係書類を受け取る
- 住所を管轄するハローワークで求職の申込みをする
- 離職票を提出し、退職理由や受給資格を確認してもらう
- 受給説明会などで手続きの説明を受ける
- 決められた認定日にハローワークへ行き、失業認定を受ける
- 必要な求職活動を行い、認定後に指定口座へ基本手当が振り込まれる
会社から離職票が届かない場合は、会社から届くまで何もできないとは限りません。退職したことが分かる資料を持って、早めにハローワークへ相談してください。会社への確認や離職票の扱いについて案内を受けられます。
離職票の退職理由に納得できない場合
離職票に「一身上の都合」と記載されていても、それだけで最終的な判断が確定するとは限りません。実際の退職理由と違う場合は、ハローワークで事実関係を説明してください。
その際は、「退職代行を使ったから会社と話せない」と考えるのではなく、退職に至った経緯を時系列で整理して伝えることが大切です。いつ、誰から、どのような連絡や要求があり、なぜ退職することになったのかを、メールや記録と合わせて説明します。
ただし、退職代行業者が会社へ「自己都合ではない」と伝えたとしても、それだけで離職理由が変更されるわけではありません。離職理由は、会社と本人の説明、提出資料などをもとにハローワークが判断します。
退職直後に働けない場合は申請時期に注意
退職後にすぐ働けない状態であれば、失業保険の受給手続きを急いで行うより、受給期間の延長が必要になることがあります。
たとえば、退職後に療養が必要な場合は、通常の求職活動ができる状態になってから受給手続きをすることがあります。受給期間には原則として期限があるため、病気、出産、育児、介護などで求職できない場合は、できるだけ早くハローワークへ相談してください。
退職代行と失業保険についての結論
退職代行を利用しても、雇用保険の加入期間などの受給条件を満たし、働く意思と能力があれば、失業保険を受給できます。
判断のポイントは、退職代行を使ったかどうかではなく、離職理由が自己都合か、やむを得ない事情や会社側の事情があるかです。離職票の内容に納得できない場合や、ハラスメント・長時間労働などの事情がある場合は、退職に至った経緯を示す資料を持ってハローワークへ相談してください。







