育休中でも退職代行を利用して退職手続きを進めることは、原則として可能です。ただし、退職日をいつにするかによって、育児休業給付、社会保険料、雇用契約の扱いが変わります。また、退職代行業者ができる対応には限界があるため、未払い賃金や有給休暇の交渉が必要な場合は注意が必要です。
育休中に退職代行を使うときの主な注意点
特に確認したいのは、次の5点です。
- 退職日をいつにするか
- 育児休業給付がいつまで支給対象になるか
- 社会保険料の免除がいつまで適用されるか
- 無期契約か有期契約か
- 退職代行業者が会社との交渉まで対応できるか
「会社に行かずに退職の意思を伝えたい」という目的であれば、退職代行の利用を検討できます。しかし、給付金や金銭の交渉を退職代行業者に任せられるとは限りません。
育休中でも退職できる?
無期雇用の従業員であれば、育休中であることだけを理由に退職できないわけではありません。退職の意思表示を会社に伝え、法律上または就業規則上の期間を経て退職することになります。
期間の定めがない雇用契約では、一般に、退職の意思表示から2週間が経過すると退職できるとされています。ただし、就業規則に退職の申し出時期が定められている場合や、会社との合意で退職日を決める場合もあるため、実際の手続きでは雇用契約書と就業規則を確認してください。
有期雇用の場合は退職できる時期が異なる
契約社員やパートなど、契約期間が決まっている場合は、契約満了前に自由に退職できるとは限りません。契約期間の途中で退職するには、やむを得ない事情が必要になることがあります。
契約期間が1年を超える労働契約で、契約開始から1年が経過している場合など、一定の条件では退職の扱いが異なることもあります。自分だけで判断せず、契約書の期間を確認し、必要に応じて労働局や弁護士へ相談してください。
育児休業給付は退職するとどうなる?
退職日以降は、育児休業給付の支給対象になりません。退職日を過ぎても給付が続くと考えて、退職日を決めるのは避けてください。
また、育児休業給付は、育児休業後に職場へ復帰する予定があることなどを前提とした制度です。育休の開始時点から退職するつもりだった場合は、支給対象にならない可能性があります。一方、当初は復職する予定だったものの、育休中に事情が変わって退職するケースでは、退職日までの扱いが問題になります。
支給済みの給付金を返還する必要があるか、退職日までの期間が支給対象になるかは、退職の経緯や申請内容によって判断されます。退職代行業者ではなく、勤務先を管轄するハローワークに、次の内容を伝えて確認してください。
- 育児休業を開始した日
- 退職予定日
- 育休開始時点で復職予定だったか
- これまでに育児休業給付を受給した期間
- 退職後に勤務する予定があるか
給付金の扱いを確認する前に退職日を決めると、想定していた給付を受けられない可能性があります。退職代行へ依頼する前に、ハローワークと退職日をすり合わせることが重要です。
社会保険料の免除は退職日まで?
育児休業中は、一定の条件を満たすと健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。ただし、退職すると会社の社会保険資格を失うため、育休中だからといって退職後まで免除が続くわけではありません。
免除の終了時期や、退職月の保険料の扱いは、退職日、資格喪失日、育児休業の終了日によって変わります。退職後に健康保険を任意継続するのか、国民健康保険へ加入するのか、配偶者の扶養に入るのかによっても手続きが異なります。
退職前に、会社へ次の書類の発行時期を確認しておくと、退職後の手続きが進めやすくなります。
- 健康保険資格喪失証明書
- 離職票
- 源泉徴収票
- 雇用保険被保険者証
- 退職証明書
健康保険の切り替えには期限がある手続きもあるため、退職後の加入先をあらかじめ決めておきましょう。
退職代行業者ができることと、できないこと
退職代行の対応範囲は、運営者が一般企業なのか、労働組合なのか、弁護士なのかによって異なります。
| 運営者 | 主な対応 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一般企業の退職代行 | 退職意思の伝達、会社との連絡の取り次ぎ | 退職条件や未払い賃金の交渉はできない場合がある |
| 労働組合の退職代行 | 退職意思の伝達、団体交渉 | 対応できる範囲は組合の規約や依頼内容によって異なる |
| 弁護士の退職代行 | 退職手続き、金銭請求、法的問題への対応 | 一般の退職代行より費用が高いことがある |
たとえば、未払い賃金、残業代、退職日、有給休暇の取得、損害賠償請求などについて会社と条件交渉をする場合、依頼先によっては対応できません。
会社と交渉する必要があるなら、弁護士または団体交渉に対応する労働組合を選ぶ必要があります。一般企業の退職代行に依頼する場合は、退職の意思を伝えることと、会社からの連絡を取り次ぐことが中心になると考えてください。
退職代行を依頼する前に確認すること
育休中の退職では、次の順番で確認すると、退職後の不利益を抑えやすくなります。
-
雇用契約の期間を確認する
雇用契約書を見て、無期雇用か有期雇用か、契約満了日がいつかを確認します。 -
就業規則の退職手続きを確認する
退職の申し出時期、貸与品の返却方法、退職届の提出方法を確認します。 -
育児休業給付の扱いをハローワークへ確認する
育休開始時の復職予定と退職予定日を伝え、退職日までの給付や返還の有無を確認します。 -
退職後の健康保険と年金を決める
任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の扶養など、自分が利用できる制度を確認します。 -
退職代行の対応範囲と追加料金を確認する
退職日の調整、有給休暇の申し出、会社からの連絡の取り次ぎ、書類の請求、金銭交渉に対応できるかを契約前に確認します。
退職代行へ依頼する際は、会社名、雇用形態、育児休業の開始日、希望退職日、会社から返却を求められている物、受け取りたい書類を整理して伝えます。
会社から本人へ連絡が来た場合はどうする?
退職代行を利用しても、会社から本人へ電話や書面が届くことがあります。退職代行業者が「連絡を受けないでください」と案内している場合は、まず依頼先へ連絡し、対応方法を確認してください。
ただし、育児休業給付や社会保険、会社からの貸与品、退職に必要な書類など、本人が確認しなければならない事項まで放置すると手続きが遅れることがあります。会社から届いた書面やメールは保管し、内容を確認したうえで、必要に応じて退職代行業者や専門家に共有しましょう。
育休中の退職で返却・受け取りが必要なもの
出社せずに退職する場合でも、会社の物品を返却し、退職後に必要な書類を受け取る必要があります。
- 社員証、健康保険証、入館証
- パソコン、スマートフォン、制服、鍵
- 会社の書類やデータ
- 離職票
- 源泉徴収票
- 健康保険資格喪失証明書
- 退職証明書
健康保険証は、資格を失った後は使用できません。返却方法や返却期限は会社に確認し、郵送する場合は追跡できる方法を利用すると、返却した事実を確認しやすくなります。
退職代行を使うか迷ったときの判断基準
会社と直接話すことが難しく、退職の意思を伝えること自体を任せたい場合は、退職代行が選択肢になります。一方で、給付金、未払い賃金、有給休暇、退職日などについて交渉したい場合は、対応できる運営者を選ばなければなりません。
- 退職の意思を伝えるだけでよい:一般企業の退職代行も選択肢
- 会社と退職条件を交渉したい:労働組合または弁護士を検討
- 未払い賃金や損害賠償など法的請求がある:弁護士へ相談
- 育児休業給付の扱いが不明:ハローワークへ先に確認
- 有期契約の途中で退職したい:契約書を確認し、専門家へ相談
最初に行うことは、雇用契約書と育児休業給付の書類を手元に用意し、希望する退職日を決めることです。そのうえで、ハローワークに給付の扱いを確認し、必要な交渉があるかどうかに合った退職代行を選んでください。
育休中の退職は、退職そのものだけでなく、給付金、社会保険、雇用契約、退職後の生活設計まで確認してから進めることが大切です。







