退職代行を使っても、未払い給与の請求はできます。退職代行を利用したことだけを理由に、働いた分の給与を受け取れなくなることはありません。ただし、退職代行業者が未払い給与の交渉までできるかは、運営元が弁護士・労働組合・一般企業のどれに当たるかで変わります。
退職代行を使っても未払い給与を請求できる理由
給与は、労働者が働いた期間に応じて支払われるものです。退職方法が本人によるものか退職代行によるものかにかかわらず、未払い分があれば請求できます。
請求できる可能性があるものには、次のような給与があります。
- 通常の勤務分の給与
- 未払いの残業代や深夜手当
- 休日労働に対する割増賃金
- 退職日までに発生した各種手当
- 会社の規定などで支給条件を満たしている賞与や退職金
ただし、賞与や退職金は、会社の規定や雇用契約で支給条件が定められている場合に限って請求できることがあります。制度があるだけで、必ず支給されるとは限りません。
退職代行業者によって、未払い給与の交渉可否が違う
未払い給与の請求を「伝える」ことと、会社と金額や支払方法を「交渉する」ことは別です。退職代行を選ぶときは、運営元と対応できる範囲を確認してください。
| 運営元 | 未払い給与への対応 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 一般企業の退職代行 | 退職の意思や請求希望を伝えることはできますが、金額の交渉や和解の代理はできません | 給与の交渉を自分で行う予定で、退職の連絡だけを任せたい場合 |
| 労働組合の退職代行 | 労働組合として会社と団体交渉を行える場合があります | 未払い給与について会社との交渉も任せたい場合 |
| 弁護士の退職代行 | 未払い給与の請求、交渉、必要に応じた法的手続きを依頼できます | 残業代が大きい、会社が争っている、損害賠償を主張されている場合 |
一般企業の退職代行に、未払い給与の金額交渉や支払い条件の合意まで任せると、対応できる範囲を超えるおそれがあります。申し込む前に、「未払い給与の請求書を作成できるか」「会社との交渉ができるか」「弁護士や労働組合が実際に対応するのか」を確認しましょう。
未払い給与を請求するために準備するもの
請求額や勤務実態を説明できる資料があると、会社との交渉や公的機関への相談で役立ちます。退職前に保存できるものは、私物の端末や紙で保管してください。
- 雇用契約書、労働条件通知書
- 給与明細、源泉徴収票
- タイムカード、勤怠記録、シフト表
- 出退勤時刻が分かるメールや業務記録
- 残業の指示や承認が分かるメッセージ
- 就業規則、賃金規程、退職金規程
- 給与が振り込まれた銀行口座の記録
- 会社とのやり取りや、未払いを示すメール・メッセージ
会社のシステムから退職後に閲覧できなくなることがあります。ただし、会社の機密情報や他人の個人情報まで持ち出してはいけません。自分の給与や勤務実態に関係する資料に絞って保存してください。
未払い給与を請求する手順
まず、未払いの対象期間と金額を整理し、会社への請求方法を決めます。退職代行に依頼する場合も、次の情報を準備しておくと話が進みやすくなります。
- 未払いの内容を特定する
何月分の給与か、通常の給与・残業代・手当のどれか、支払われた金額はいくらかを整理します。 - 証拠を保存する
雇用契約書、給与明細、勤怠記録、会社との連絡記録を保存します。 - 請求額を計算する
給与明細や勤務時間をもとに、未払いの元本を確認します。残業代は割増率や休憩時間によって計算が変わるため、判断が難しい場合は弁護士などに確認します。 - 請求方法を選ぶ
会社へ自分で請求するほか、弁護士や、対応範囲を確認したうえで労働組合に依頼します。 - 支払日と入金額を確認する
合意書を作成する場合は、支払額、支払期限、振込先、ほかの請求権を放棄する内容が含まれていないかを確認します。
退職した労働者が給与の支払いを請求した場合、会社は、労働基準法上、退職後の給与などを一定の期間内に支払う必要があります。ただし、給与の締め日や支払日、請求内容によって扱いが変わるため、具体的な支払日を一律に決めつけないようにしましょう。
未払い給与の請求には時効がある
未払い給与の請求を放置すると、時効によって請求できなくなる可能性があります。現在の賃金請求権は、原則として賃金の支払期日から3年間で時効にかかります。これは、2020年4月1日以降に支払期日が到来する賃金についての扱いです。
それより前に支払期日が到来した給与には、経過措置として異なる期間が適用される場合があります。複数年分の残業代を請求する場合や、古い未払い給与が含まれる場合は、早めに専門家へ確認してください。
請求書を送っただけで、必ず時効の進行が止まるとは限りません。内容証明郵便などによる請求や、労働審判・訴訟などの手続きによって扱いが異なるため、時効が近い場合は弁護士に相談するのが安全です。
会社が「退職代行を使ったから払わない」と言った場合
退職代行を利用したことだけを理由に、すでに働いた分の給与を支払わないことは認められません。会社が支払いを拒否した場合は、拒否の内容と理由をメールなどで残し、給与明細や勤怠記録と合わせて保管してください。
一方で、会社が「無断欠勤による損害がある」「引き継ぎが不十分だった」などと主張し、給与から一方的に差し引こうとするケースでは、別の法的問題が関係します。会社の主張が正しいと決めつけたり、反対に必ず違法だと断定したりせず、証拠をそろえて専門家に確認しましょう。
明らかな賃金未払いについては、労働基準監督署へ相談できる場合があります。ただし、未払い額の計算や契約解釈など、会社との民事上の争いをすべて解決してくれる機関ではありません。会社との交渉や回収まで求めるなら、弁護士や対応可能な労働組合への相談を検討します。
退職代行を選ぶ前に確認すること
未払い給与の請求も目的にするなら、料金だけでなく、次の点を確認してください。
- 運営元が一般企業、労働組合、弁護士のどれか
- 未払い給与の金額交渉まで対応できるか
- 残業代の計算や請求書の作成を依頼できるか
- 会社が支払いを拒否した場合の対応範囲
- 基本料金とは別に、交渉費用や成功報酬がかかるか
- 退職代行の担当者と、交渉を行う弁護士・労働組合が誰か
退職だけを急いで伝えたいなら一般企業の退職代行、会社との交渉まで必要なら労働組合や弁護士、金額や法的責任に争いがあるなら弁護士というように、依頼したい内容に合わせて選ぶことが大切です。
退職代行を使っても未払い給与は請求できます。最初に、給与明細と勤怠記録を保存し、未払いの期間と金額を整理したうえで、依頼先が給与交渉まで対応できるかを確認してください。時効が近い場合や会社が支払いを拒否している場合は、早めに弁護士などへ相談しましょう。







